【目次】
1.釜山の海と母の味──僕にとってのイワシエキスの記憶
2.イワシエキスとは?
3.製法と特徴
4.キムチづくりへの効果
5.他の魚醤との違いと代用品
6.イワシエキスの使い方のコツ
7.まとめ
1. 釜山の海と母の味──僕にとってのイワシエキスの記憶
僕が生まれ育ったのは、韓国・釜山の港町。
初夏の風が吹くころになると、港にはカタクチイワシが山のように水揚げされ、街全体がほのかに潮の香りに包まれていました。


毎年6月になると、母はその新鮮なカタクチイワシを使って魚醤を仕込むのが恒例でした。
大きな壺にイワシと塩を丁寧に重ね、日差しと時間に任せてじっくり発酵させる…。
幼い僕は興味津々でその様子を見守っていましたが、いざ壺のふたを開けた時に立ち上がるのは、「これが家庭の味?」と疑うような強烈な匂い。
イワシのエキスが発酵する時のにおいは決して「いい香り!」と言えるものではなく、魚臭くて鼻をつくほどのものでした。
しかし、その臭い液体がキムチに加わったり、チゲや炒め物などに加わって食卓に上がると魔法のように美味しい料理へと変わっていました。

そんな記憶が、料理人となった今もずっと僕の原点です。
今日は、その母の手仕事を思い出させてくれる存在、韓国料理に欠かせない「イワシエキス(멸치액젓)」について、お話ししていきたいと思います。
2. イワシエキスとは?

韓国で「멸치액젓(ミョルチエクジョッ)」と呼ばれるイワシエキスは、発酵させた小魚(主にカタクチイワシ)を原料とした液体調味料です。
キムチ作りに欠かせないだけでなく、スープや炒め物、煮物にも使える万能な旨味調味料。
しかし「キムチ以外にどう使ったらいいかわからない」と冷蔵庫で眠っている…そんな声もよく耳にします。
今回は、その魅力をしっかり掘り下げていきましょう。
3. 製法と特徴

- 小魚(主にカタクチイワシ)に塩を加え、一定期間発酵・熟成させた後、液体部分だけを抽出して作ります。
- アミノ酸や核酸が豊富で、ただの塩味ではなく複雑で深みのある旨味を加える効果が高いのが特徴。
- 発酵によって生まれる独特のコクと香りは、普通の塩だけでは決して得られない“魔法の調味料”とも言える存在です。
4. キムチづくりへの効果
イワシエキスは、キムチ作りにおいて非常に重要な役割を果たします。
- キムチに酸味と奥深い香りを与え、野菜の発酵をスムーズに進めます。
- 食材の雑菌を抑え、乳酸菌の活動を助けることで、より豊かで芳醇な発酵風味が生まれます。
- 白菜や大根の自然な甘みや辛味と絶妙に調和し、魚介系の旨味が野菜の味をぐっと引き立ててくれるのです。
5. 他の魚醤との違いと代用品
キムチのレシピを紹介していると、よく聞かれる質問があります。
「イワシエキスの代用はできますか?」というものです。
まず、韓国産イワシエキスと、東南アジアの魚醤(ナンプラーやニョクマム)の違いを整理しましょう。
- ナンプラーやニョクマムも同じく魚を発酵させて作る調味料ですが、韓国のイワシエキスはより粘度が高く、味も濃厚。
- イワシエキスは独特の香りが強めなことが多く、韓国料理特有の“キレ”を生み出します。
- 料理に使う際は、量や投入のタイミングを調整して香りの強さをコントロールできます。
とはいえ、イワシエキスが手元にない場合はナンプラーなどの魚醤で代用可能です。
ただし、香りと味わいの濃さが異なるため、入れる量は少しずつ調整してください。
6. イワシエキスの使い方のコツ
「キムチ専用」と思われがちなイワシエキスですが、実は使い道はたくさんあります。
- スープやチゲに少し加えるだけで旨味爆発!
- イワシエキスがサムッパのソースに。
韓国の南地方(釜山、全羅道地域)ではイワシエキスにニンニク、粉唐辛子、ゴマなどを入れてサムッパのソースとして使われています。 - 炒め物や煮物の塩加減調整にもおすすめ。
ただし、一気に入れると生臭みが出ることがあるので、少量ずつ味を見ながら加えるのがコツです。 - 開封後は必ず冷蔵庫保存。
開封後の常温保存の場合は発酵が進みすぎて風味が強くなりすぎることと、臭みが出ることがありますので必ず冷蔵保存しましょう。
できれば開封後、3〜6ヶ月以内を目安に使い切るようにしましょう。
7. まとめ
イワシエキスは、僕にとって母の愛情と釜山の海の記憶が詰まった調味料です。
その一滴が、キムチだけでなく普段の料理に驚くほど深みを加えてくれるもの。
もし、冷蔵庫で眠っているイワシエキスがあれば、ぜひ今日から使ってみてください。
きっと「何かひと味足りない」を埋めてくれる、プロの味わいを家庭で再現できる秘密兵器になりますよ!
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それでは、今日も美味しい一日を!
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